2017年 エギュイヨン・シュル・メール

 ル・テッシュからコルニッシュ・ド・ジロンドと呼ばれる、ジロンド河沿いの崖道を通ってヴァンデ地方のエギュイヨン・シュル・メールへ。藤やリラに彩られた村々とボルドーの銘酒の葡萄畑が続く、この崖道から見える風景がまさに絵にも描けない美しさ。写真にも撮れない美しさ。車を停めることができないので。

 去年も訪れた懐かしい青い家へ。今年は裏庭のリラが花ざかりで、そこにムネアカヒワやゴシキヒワが遊びにやってくる。

 ところが、去年渉禽類がいっぱいいたポワント・デギュイヨンは閑散としている。オガワコマドリ目当ての写真家たちは相変わらず大勢いるが。ヤツガシラやコキンメフクロウを見たディーヴにはいるのは今年はチョウゲンボウとニシコクマルガラスくらい。足を伸ばしてサン・ドニ・デュ・ペレの鳥類保護区に行くことにする。観察小屋に至る目隠しの長い廊下を歩いていたら、カメラを構えている紳士がいるので立ち止まって撮り終えるのを待つ。我々に気づいた紳士は「ノドジロムシクイがいるんですよ」と微笑みながら言う。私と同じカメラと望遠ズームの組み合わせだということに目を留めた夫はなにやかや話しかけていたが、この紳士、鳥にも鳥見スポットにも詳しくて色々教えてくれた。ここはお昼になると閉まってしまうので、追い出されるようにして駐車場に向かうと、紳士がキャンピングカーに入って行くところが見えた。

 写真家たちの人気者。オガワコマドリ

 紳士に教えてもらったレルーの公共沼地(Marais Communal)に行ってみることにする。ひたすら『 Communal』という標識の矢印通りに行くと着くはずです、という言葉を頼りに車を走らせる。無料の出入り自由の場所だが、ちゃんと観察小屋があり双眼鏡も備え付けられていた。湖の奥にはだーーーーっと広い草原が広がっている、と見えたのだが、点在しているコブハクチョウたちの動き方をみると泳いでいるようにしか見えない。草は生えているが沼地なのだ。と、草の間をすいすい泳いでいたコブハクチョウたちがバタバタと大きな羽音をさせながら飛び上がり手前の湖の方に降りてきた。猛禽が?しかし、この図体で猛禽を怖れるのか?と訝りながら空を見上げるが脅威を与えそうな姿は何もない。「あ、あれのせいだ」と夫が指差すほうを見ると一頭のノロ鹿が走っていた。

 近所に住む孫を連れたおばあさんとかがやってくる、保護区のように柵に囲い込まれていない自然状態の広々した開放的な空間が心地よくて、一週間の滞在中3回も行ってしまった。そして、そのたびにオナガガモの飛翔を見たり、クロハラアジサシの捕食風景を見たりと鳥果もある。

 この紳士にはその後もポワント・デギュイヨンで数回出遇った。渡り鳥の数を数えるボランティアをしているので、渡りの時期にはよく来るのだそう。クロヅルが何千羽と降り立つときの様子やショウドウツバメに取り囲まれたときのことのことなどを教授と呼びたくなるようなもの静かな落ち着いた口調で話してくれる。「今の季節は何もいませんね」と夫が口を挟むと「学校休暇に合わせて渡るわけではありませんからね。私たちが鳥に合せなければ」。双眼鏡だけで、かなり遠くにいる鳥も素早く判別するので、「すごいですね。フィールドスコープなしであんな遠くのがわかるなんて」と感心すると、「フィールドスコープ、フィールドスコープ・・・あれを持ち歩くのには下働きの者が必要ですな。双眼鏡とカメラだけでも肩が凝るのに」。なかなか味のあるおじさんなのであった。

 ヴァンデ地方からパリへ戻る途中のどこかで。こういう菜の花畑を見るたびに、ああ、フランスだなぁと思う。

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